更新日:2023.09.27
こいしゆうか 男性目線で語られがちなキャンプに女性目線を取り入れた、女子キャンプの第一人者
日頃から仕事にプライベートに様々なキャンプ場を訪れているHondaキャンプ制作メンバー。数多くのキャンプ場があるなか、メンバーそれぞれが気になっているキャンプ場へ実際に訪れて取材し、キャンプ場の魅力を紹介します。
今回紹介するのは、長野県川上村の「ist - Aokinodaira Field(以下、ist)」です。以前は善心道場青木の平キャンプ場として営業していましたが、2022年9月に装いを新たにリニューアルオープン。
経営には東京と京都で古民家や倉庫を改装したホテル・ホステルなどを運営する「Backpackers’ Japan(バックパッカーズジャパン)」が携わり、宿泊施設のHutやコミュニティスペースのLoungeなど個性的な建物を中心とした、日常的なライフスタイルに近いフィールド作りが最大の特徴です。キャンプ場名のistとは、「地峡(2つの陸地をつなぐ海や湖に挟まれた細長い陸地のこと)」を意味する「isthmus(イスムス)」から来たもので、地峡のように暮らしと自然をつなぐ場となることを目指しているそうです。
都会での洗練された空間プロデュースに実績のあるBackpackers’ Japanが手がけるキャンプ場とは?自然とどのように関わっていくのか興味を持ったこいしゆうかが、訪れた様子と感じたことをレポートします。
従来のキャンプ場の枠から少し視点を変え、アウトドアでの生活をより身近なものにする、普段着で気軽に行けるようなコンセプトがとても新鮮!
「ist」は八ヶ岳の麓、日本一標高の高いJR鉄道駅「野辺山駅」からほど近い標高約1,350mに位置し、夏でもとても涼しい環境です。国道141号から野辺山駅の横を抜け、風光明媚なレタス畑(レタス街道)を越えた先、深い森にキャンプ場が現れます。
入り口は石のゲート。ここから森に入っていきます。敷地面積は約6万7000㎡もあり、とにかく広大。場内は全域が木々に囲まれ、千曲川の源流が流れていたり、幻想的な雰囲気を醸す小さな池もあるなど、ありのままの自然に抱かれるような環境です。
川沿いではオオルリがさえずり、受付の近くではジョウビタキが鳴いていたり。また、ふらっと場内を散策しただけで年月を感じる深い森はとても美しく、「ああ、気持ちいい自然の中に来たなあ」と、キャンパーの心をくすぐります。
キャンプサイトはロケーションごとに名称が異なり、9つのエリアに分かれています。それぞれの特徴を解説していきましょう。
●River
川沿いでせせらぎを楽しめる「River」はAとBの2種あり、どちらもクルマの乗り入れができるオートサイトです。Aに関してはistで唯一直火ができ、ワイルドな焚き火をしたい人にはおすすめです(サイト内のファイヤーピット内に限ります)。
●Forest
木々に囲まれた「Forest」はA〜Cまで3種あり、それぞれ少し特徴が異なります。
Aはクルマの乗り入れが不可。ふわふわの地面でやや高台にあるため、周囲との視線が合わないのが利点です。
Bはクルマの乗り入れが可能なオートサイトで、サイトのすぐそばにJR小海線の線路があるため、通り過ぎる列車を目の前で眺められる珍しいサイトです。
Cはクルマの乗り入れができますが、4WDが推奨です。キャンプ場の奥地にあってワイルドな秘境感が楽しめます。
●Duck Pond
場内中央付近の小さな池の前にある「Duck Pond」は、芝の美しいサイトです。芝のエリアにはクルマの乗り入れはできません。こぢんまりとした規模なので、ソロやデュオでのんびり過ごすにはいいでしょう。
●Garden
天然芝の心地よいオートサイトです。管理棟など各施設にアクセスしやすく、キャンプビギナーに優しい環境です。枕木や地形によって隣接サイトとの区切りがされており、プライバシーの確保がしやすいでしょう。
●Terrace
開けた空とフラットな地形が特徴的なオートサイトです。トイレや炊事場がすぐ近くに配置されています。子どもが小さなファミリーやグループでの利用には適した環境といえるでしょう。
●Sky
istのなかでもっとも開放感があるオートサイトです。満天の星を眺めるには断然おすすめです。とても広々としているので、大型のテントなどを設営がしやすくファミリーやグループに適しています。ただし、他のサイトよりも木陰が少ないため、日差しを遮るタープは必携です。
人気が高いのは川沿いの「River」だそうで、取材に訪れた日は平日にもかかわらず、多くのキャンパーが川の音を聞きながらのんびり過ごしていました。
静かにキャンプを楽しみたい人には、森が深い「Forest」がおすすめです。プライベート感があり、周囲に気を使わずにソロキャンプをするにはいいですね。木が多いので、ハンモックキャンパーには最高!
●設備
歴史を感じる深い自然のなかに、突如現れる大きな建物が、受付兼カフェやダイニングバーもあるLounge。元々は食堂だった建物をリノベーションしたもので、キャンプ場とは思えない、とても居心地のいい雰囲気で、思わずまったり過ごしていたくなります。クラフトビールやワインなどの販売をしているので、ぜひお試しを。
屋根付きの炊事場は中央にシンクを構え、その後ろにはちょうどいい高さに台が配されています。
トイレも清潔感があります。写真は靴を脱ぎ、階段を少し上がって利用するタイプ。
炊事場やトイレは場内にバランスよく配されているため、どのエリアでキャンプをしても、さほど不便に感じることはなさそうです。
シャワールームは9〜11時、15〜21時の間に1回500円で利用ができます(Hut利用者は無料)。また、ゴミを捨てるにはサイト料のほかに別途処分料の500円が必要です。
●宿泊施設
数多くのリノベーションを手がけるBackpackers’ Japanが、istで注力しているのは、宿泊施設の「Hut」(ハット=小屋の意味)。森のなかに佇むそれらの姿は、どこか北欧の国を彷彿させるデザイン。 istのフィールド作りは大工さんと二人三脚で「次のHutはどのようなスタイルか」などとじっくり話し合うところからスタートしているそう。
宿泊施設はHutが4種それぞれ1棟ずつとNutshellと呼ばれるタイプが2棟。どれもスタイルのコンセプトが異なり、シンプルな中に心地よく過ごせるための個性があふれています。
Hutの4種はWi-Fiがつながるので、ワーケーションにもピッタリ。さらに、ヒーターや床暖房、薪ストーブなどを完備しているので寒い時期でも安心です(NutshellはWi-Fi、暖房設備ともに対象外)。
Nutshell
もっともシンプルなタイプの「Nutshell」。極端にいえば食べる場所と寝る場所のみを備えた1〜2名用で、コンセプトは「キャンプの醍醐味とキャビンの快適さを併せ持つちょうどいい空間」。
室内はリビングと小さな水回りとロフトの寝室だけ。とてもコンパクトにまとまっています。気分に応じてタープを張ったり好きなキャンプ道具を使ってみたり、その自由度の高さを存分に満喫したい宿泊施設です。
安心して眠れる寝室と、ゆったり過ごせるリビングがある。それだけでも普段のキャンプより格段に余裕ができ、新たな過ごし方やスタイルの見直しなど、今までにないアイデアが生まれるかもしれません。
Hut -roof-
「roof」は4人用。スクエアな建物が3つ連なり中央はリビングルーム、両サイドにベッドルームが備わっています。3つの部屋のすべて、3面に大きな窓が配されていて「自然の景色に囲まれ四季を感じる」がコンセプト。
室内にいるのに、まるで森の中で眠っているような気持ちになれるHutです。丘の上に立ち、開放感のあるウッドデッキも特徴で地形を活かしたデザインにこだわりを感じます。
Hut -nest-
「小さいけれど充ち足りている」がコンセプト。1〜2名で過ごすのに十分な、無駄のない作りです。
連泊してゆっくりひとりで読書をしたり、窓から森を眺めながらコーヒーを飲んでくつろぎたくなるような空間です。川のせせらぎに寄り添うように立ち、ファイヤーピットでは焚き火を楽しめます。
Hut -coal-
1〜3名用の「coal」。コンセプトは「森の隠れ家のような静寂」。特徴的な黒い外観は「焼杉」を使用しているため。時おり古い町並みで見かけるこの外壁は、見た目のよさだけでなく耐久性を上げるためでもあるそう。
室内の明かりはあえて暗くしていて、窓から見る森を際立たせてくれます。どことなく「和」の雰囲気を醸し、茶室にいるかのような空間です。
Hut -float-
「float」は4人用。地形をうまく利用し、池の上に浮遊しているような作りです。コンセプトは「薪ストーブのある暮らし」。
薪ストーブを空間いちばんの主役に、薪ストーブを囲みながら外の風景が一望できるようにレイアウトされています。開放的なデッキの上ではファイヤーピットで焚き火ができます。
自然と融合したシンプルなHutには大工さんのこだわりがつまっていて、窓枠に丸みをつけてやわらかくしたりなど、自然とのバランスが考えられています。もはや日替わりでHutに住みたい!と、何泊もしたくなるような魅力あふれる小屋ばかりなのです。
キャンプをする人もしない人も、自然のなかでストレスフリーに。istは、そんなふうに、私たちの暮らしに自然の気持ちよさを優しく提供してくれるフィールドです。
のんびり森を感じながらLoungeで過ごし、ほかのお客さんやスタッフとゆっくりコミュニケーションをとるという、新しいシーンが思い浮かびます。
標高が高く、暑い時期は過ごしやすい八ヶ岳山麓ですが、冬場はマイナス20℃まで気温が低下するほど厳しい環境にもなります。それでもistは通年営業をするたくましさ。
キャンプはもちろん「Hut」やLoungeで過ごす、自然に密接したごく日常的なアウトドアのスタイル、みなさんもぜひistで味わってみてはいかがでしょう。
フィールド作りの観点が「日常生活のなかに自然を取り込む」ことに徹しているist。とくにHutはそれを具現化している象徴のように思えます。キャンプが好きな人も、あえて一度Hutに泊まってみるとistのこだわりがより感じられるかもしれません。
※このコンテンツは、2023年9月の情報をもとに作成しております。
※お出かけ前に最新の情報をご確認ください。