苦い、えぐみがある、酸味が強い、こうしたスモークの失敗は、食材の乾燥不足が主な原因です。今回は、面倒な手間ナシでおいしいスモークを作るコツを解説。乾燥をはじめ、ポイントさえ押さえておけば、失敗は大幅に減らせます。また、燻製器を使わず、手持ちの鍋で手軽にスモークを作る方法もご紹介します。
更新日:2018.03.14
本格的なスモークは、食材を塩漬け→塩抜き→乾燥という手順を踏んでから、煙にかけます。塩漬けしたものをわざわざ塩抜きするのは、均一に塩を入れるため。でも、保存目的ではなく、夜の酒肴のためにスモークをするなら、塩漬け→塩抜きの手順は省略して問題ありません。
おいしく作る上でポイントとなるのは乾燥の工程です。燻製を作る際の煙には、フェノールや有機酸などいろいろな成分が含まれており、食材の表面に水分がついているとこれら煙の成分と反応し、酸味やえぐみ、苦みが出てしまうのです。
また、食材表面をしっかり乾燥させることで、香り成分が水分の多い内側へと入りやすいという性質もあります。
普通に料理をするときと同じように、食材に下味を付けます。魚や肉は、軽く塩をふるだけでもOK。写真の半熟卵は、めんつゆに漬けました。また、市販のソーセージやチーズなど、あらかじめ味付けがされたものであれば、この工程は不要。手軽にスモークを楽しめます。
塩漬け→塩抜きの手順は省略できますが、決して気を抜いてはいけないのが乾燥。「苦い、えぐみがある」「酸味が強くてあまりおいしくない」というのは、乾燥が不十分だから。
キッチンペーパー等で表面の水分を拭き取ってからザルやネットにのせ、風通しの良い日陰で乾燥させます。乾燥具合は、指で食材の表面に触れ、水分を感じなければOK。最低1時間、できれば半日ほど風に当てて様子を見ましょう。
十分に乾燥させたと思っても、加熱すると食材から水分が出てくることがあります。これもえぐみや酸味の原因となるので、途中で中を確認し、表面に水分がついていたらキッチンペーパー等で拭き取りましょう。
ナッツなどの乾燥食品であれば、水分を気にする必要がないので失敗知らず。ナッツのスモークは味も絶品のため、ぜひ試してみてください。また、塩やコショウをスモークしてもおいしいですよ。
半熟卵や魚介類など、火が通りすぎると硬くなる食材は温燻(50~80℃でじっくり時間をかける方法)で風味を付けます。スモークチップよりも、高温になりにくいスモークウッドの方が、硬くなる心配は少なくて済みます。
スモークウッドは直接火をつけて使います。熱源不要で線香のように煙を出し続けてくれるので、中の温度が高くなりすぎる心配がありません。高温だと溶けてしまうチーズも、スモークウッドならより気軽です。ただし、スモークウッドであっても中の温度は上昇するので、時々温度計を確認し、温度が上がりすぎてしまったら蓋を開けて温度調整をしましょう。
しっかり火を通したい肉類は、スモークチップを使った熱燻(80~120℃の高温で短時間で仕上げる方法)で風味を付けます。上下で色の付き方が異なる場合があるので、時折裏返してみてください。
スモークチップは出がらしのお茶や香草、柑橘類の皮などを混ぜてさわやかさをプラスしたり、自分好みの配合で仕上げるのも楽しみ方のひとつ。ちなみに、スモークチップにザラメを混ぜておくと、きれいな飴色に仕上がります。
できあがったスモークは、30分~1時間ほどおいて煙臭さを飛ばすとよりおいしく食べられます。
煙を閉じ込めることさえできれば、手持ちの鍋でもスモークを作ることができます。
ただ、スモークの後には茶色いタールが鍋にこびりつくので、お気に入りの鍋、繊細な鍋には不向きです。普段使っていない鍋など、汚れても良い鍋をスモーク用として別で用意するといいでしょう。
アルミ製の鍋は基本的に空焚き禁止ですので、加熱し続ける必要があるスモークチップは使えません。アルミ鍋でスモークを作る時は、スモークウッドを使用しましょう。
深めのアルミトレイ(写真はパウンドケーキ型)にスモークウッドを入れて鍋の底に置き、その上に網を置いて、蓋をします。スモーク中は、鍋の中の温度が50~80℃になるよう調整しましょう。温度計を刺しっぱなしにできない鍋では、短時間で計測できる料理用のデジタル温度計があると便利です。温度が高くなりすぎた場合は、鍋の蓋を開けて温度を調整しましょう。
鍋へのダメージが不安なら、アルミトレイを2重にしてもいいですね。
ダッチオーブンの場合は、短時間の空焼きに対応しているので、スモークウッドだけでなくスモークチップも使えます。深めのアルミトレイがない場合は、アルミホイルを丸めて台にし、その上に網を乗せます。
密閉性の高いダッチオーブンでは、酸素の供給がなくなり燻煙材が立ち消えしてしまうことがあります。竹串や小枝を蓋に挟んで極細い隙間を作り、空気の通り道を確保しましょう。また、立ち消えしていなければその隙間から煙が出てくるので、煙の状況を気にかけておくように。
スモークが終わったら、きちんと消火します。できれば水をかけておきたいですね。
※このコンテンツは、2018年3月の情報をもとに作成しております。