アウトドア料理のツールとしてすっかり定番となったダッチオーヴン。鋳鉄の鍋で、高い蓄熱性などの優れた機能と、独特の風合いで人気です。とはいえ、アウトドア専用と思われていたり、重いから…と敬遠している方も多いはず。今回は、そんな鉄鍋の素顔を紹介しましょう。
更新日:2013.11.11
近年、ダッチオーヴンという言葉をテレビや雑誌でよく見聞きするようになりました。オーヴンと言っても、台所にあるガスや電気式ではなくて、鋳物の鉄鍋のこと。カバー(フタ)をして上下から熱すると、オーヴンと同じ効果が得られることと、アメリカでこのタイプの鍋を売り歩いたのがオランダ人だったことから、オランダ人のオーヴン=ダッチオーヴンと呼ばれるようになったと言われます。焚火、炭火で使えるので、アウトドアの人気ツールになりました。
カバーの上と、鍋の下と両方から炭火で熱するので、オーヴンのような効果が得られます
下火はホワイトガソリンやガスのバーナーで、上火を炭…という手もあります
ダッチオーヴンには、キャンプ・ダッチ・オーヴンと、キッチン・ダッチ・オーヴンと呼ばれるものがあります。前者は、鍋本体に脚がついていて、炭火の上でも鍋を安定させることができます。また、カバーの縁がぐるりと一周、枠のように盛り上がっている(フランジ)のも特徴で、これはカバーの上に炭を置く時、調理中に落ちないようにする工夫。
一方、キッチン・ダッチ・オーヴンは、台所で使うため脚はありませんし、フタにフランジもありません。そのかわり、フタの裏側に角のような突起がいくつもついています。これは、素材から出た香りや旨味を含んだ水蒸気を、もう1度、素材に降り注がせるためのアイデア。鍋の中で何度も行き来させて、素材にしみ込ませるわけです。
キッチン・ダッチ・オーヴンのカバーにはこんな突起が…。旨味や香りを対流させて食材に磨きをかけてくれます
最近では、ダッチオーヴンのほかに、スキレットというフライパンも人気。ダッチオーヴンのひとつとして紹介されることもありますが、基本的な特徴や機能、使い方は同じです。
いずれにしても、以前はシーズニングと言って、最初に使う前に油を塗って空焼きをしなければなりませんでしたが、最近ではそれを済ませたタイプもあります。ただ、どちらの場合でも、使い終わったら冷めないうちに、洗剤を使わずぬるま湯で洗っておきましょう。
ダッチオーヴンを実際に手にすると、その重さに驚かれるかもしれません。この鍋を敬遠する方の多くがこの重さを口にします。確かに短所と言えば短所ですが、これがダッチオーヴンの武器。肉厚の鋳鉄じゃなければできないことがあるんです。
グルメ番組などで、“厚い鉄板だからステーキが美味しく焼ける”なんて話を聞いたことがありませんか? 肉厚だと熱をたくさん蓄えることができるので、食材を乗せても表面温度が下がらないんです。だから、表面を焼き固め、肉汁を閉じ込めることができるというわけ。同じ理由で、揚げものや炒め物もびっくりするくらい美味しくできます。天ぷらも野菜炒めも、テクニック要らずでレベルアップ間違いなし!
鶏を放り込んで、あとはカバーをして放っておくだけ…まさに鍋が料理してくれるんです
熱を一旦蓄えるので、こんな長所もあります。火のあたりが柔らかく、均一であること。たとえば、薄いアルミ鍋だったら、火の当たる部分が一気に熱くなって焦げやすくなりますが、厚みのある鉄鍋だと、火が当たった所から熱がじんわりと内部に伝わって、溜まり、食材に放出されます。だから、ほかの鍋のようにちょっと目を離した間に焦げてしまったり火が通り過ぎたりということも起こりにくいんですね。また、カバーも重いので鍋の中の圧力が高まり、圧力鍋のような効果で素材を柔らかく煮たり、味をしみ込ませたりすることができます。
だから、放っておいても料理ができてしまうわけ。鶏なら丸のまま、ハーブと塩で下ごしらえをしたら、ダッチオーヴンに入れて1時間ほど放っておけばOK。むしろ、何度も開けてようすを見るのは、熱や圧力が逃げるのでNGです。煮物も、カレーやシチューも同じ。野菜の無水調理も可能で、鍋が勝手に料理を仕上げてくれますよ。
魅力いっぱいのダッチオーヴンですが、重いとか、大きいとか、そんなウイークポイントがどうしても気になる方におすすめなのが、前出のスキレット。鶏を丸々1羽なんて芸当はできませんが、基本的な鋳鉄鍋の魅力をより身近に楽しめます。家庭の台所で使うのにもぴったりです。
たとえば、ステーキ。スーパーで売っている普通の牛肉を室温に戻して塩コショウ…プレヒートした(事前に鍋を熱しておくこと)スキレットに乗せてみれば、その実力にびっくりするはず。強めに熱しておいて、手元にある野菜とベーコンを放り込んで炒めれば、その旨さに目を見張ります。トウモロコシの皮をむかず、水も加えず、そのまま蒸し焼きにしてみましょう。信じられないほどの甘さを引きだしてくれます。
カバーもプレヒートしておいて、市販のアップルパイを温め直すのも、スキレットの実力を簡単に知る方法。焼き立てのように生地がサクッと甦って、テントサイトが笑顔でいっぱいに…。
いずれにしても、スキレットで鋳鉄鍋の実力を知ったら、ダッチオーヴンに挑戦してみましょう。その頃には、鋳鉄の虜になっているでしょうから、あの重さも気にならなくなっているはずですよ!
まずは、家で試してみましょう。スーパーの肉だって、激ウマのステーキに早替わりです
ピッツァだってお手のもの。スキレットで簡単に焼けました
※このコンテンツは、2013年11月の情報をもとに作成しております。