冬キャンプの暖房といえば、焚き火や薪ストーブ、湯たんぽなどが使われてきましたが、この冬、にわかに注目度が高まっているのがペレットストーブです。燃料となる木質ペレットは石油危機をきっかけに生まれた比較的新しい燃料で、間伐材を用いたエコな燃料ともいえます。その歴史は50年ほどになりますが、薪や炭よりも新しい燃料には違いありません。今回はこの注目の暖房器具のキャンプでの使い勝手やメリット、気になる燃料代や費用相場などを解説します。
更新日:2023.03.08
ペレットストーブとは、「木質ペレット」を燃料としたストーブです。
木質ペレットは、本来はゴミとなる木くずや端材などを原料としているため環境に優しく、燃やした時に排出される灰や煙が少ないという特徴があります。
ペレットストーブは、燃料タンクにペレットを入れておき、着火剤など使って火をつけることで、ペレットが少しずつ燃焼されていく仕組みとなっています。自動で燃料が補給される機種も多く、薪ストーブのように薪をくべる必要がありません。
暖炉や薪ストーブのように揺らめく炎を眺めることができ、手入れがしやすく料理にも使える暖房器具です。
ペレットストーブは、使う機種によって特徴が異なり、目的に合ったものを選ぶことが大事です。
デザインの違いはもちろん、機能面では、電力を使用し自動で着火や燃料が補給されるタイプや、暖め方が異なるタイプもあります。また、折り畳みが可能でコンパクトに収納でき、キャンプに持ち運べるものなど、特徴は様々です。
用途に合わせ、欲しい性能やデザインなどを購入前に確認することをおすすめします。
ペレットストーブの燃料となる木質ペレットは、細かく粉砕された木材を乾燥し、圧力をかけて円筒状に成形したものです。
材料となる木材は間伐材や、製材時に発生する樹皮やおがくずなどで、森の再生を助けるばかりか森林資源を無駄なく使えるクリーンな燃料なのが特徴です。
また、木質ペレットには以下の3種類があります。
3種類の違いは原材料にあります。
木部ペレットは木質部をメインとしたペレットで、樹皮ペレットは樹皮を主体としたペレットとなります。また、全木ペレットは木部と樹皮の混合の原料です。
木部・樹皮の配分量によって、発熱量やメンテナンスの手間などに違いが出ます。一般的に、木部の配合が多いと発熱量が高くなるため、燃焼時間が短く、灰の量は少なくなります。また、樹皮の配合が多くなると燃焼時間は長く、残る灰は多くなります。
ペレットは種類によって用途が異なり、ペレットストーブでは木部ペレットと樹皮ペレットが多く使われています。
薪と比べてみると以下の違いがあります。
よく乾燥していて圧縮されているので火付きがよく、発熱量も十分です。つまり煙も少なくすみます。
また、形が揃っていて必要な分だけ持ち運べるため、保管も楽です。成形時に添加物を使っていないのでにおいがなく、虫もわかないので、リビングに置いていても大丈夫です。
木質ペレットの特徴がわかったところで、ペレットストーブの使い勝手を見ていきましょう。キャンプ用のペレットストーブで使い心地を検証します。
ペレットストーブの使い方は簡単です。薪ではなく木質ペレットを指定の場所に注ぎます。
着火剤に火をつけてしばらく放置するだけで完了です。たったこれだけです。10分もすれば勢いよく木質ペレットが燃えていきます。燃えた分だけ給口部から注がれたペレットが落ちてきて、また燃えて、またペレットが補充されて、の繰り返しといういたってシンプルな構造です。
なお、写真のペレットストーブは着火剤に火をつけ、扉をロックするだけで木質ペレットに着火できますが、煙突をあたためるなどプレヒートが必要なペレットストーブもあります。また、ロケットストーブなど薪や炭も使える機種では別途木質ペレットを受け止める専用バスケットが必要なものもあります。ペレットストーブを手に入れる前に、その着火方法を調べておきましょう。
木質ペレットは品質が安定していて燃焼時間を管理しやすいのが最大のメリットです。焚き火では眠くなっても熾が残っていると目を離せませんが、ペレットストーブは燃焼時間が大幅に狂うことは滅多になく、就寝時間を逆算できます。予定時間に眠くならず、もうちょっと遅くまでストーブの前で過ごしたい場合も継ぎ足しOKです。
ただし、あまりに燃料が少なくなってからの少量継ぎ足しはうまく燃焼できない場合があります。このあたりは焚き火同様で早め早めの対応が必要です。
ペレットストーブは煙が少なく、においもありません。それでいて薪ストーブ同様、オレンジ色の炎が出るので、機種によりますが美しくパワフルな炎を眺められます。着火直後は着火剤を使うこともあり多少煙が出ますが、すぐに落ち着きます。
ちなみに、雨続きのフィールドでは薪も焚付もたっぷり湿気を含んで着火に手間取りますよね。気温が低い冬はなおさら大変なのですが、そんな劣悪条件でもペレットストーブなら煙はごくわずかです。煙がサイト内に立ち込めることはそうそうありません。
非常によく燃えるペレットストーブですが、薪ストーブや焚き火台同様、灰が溜まって空気を供給しづらくなると燃えにくくなります。
薪を組み替えたり空気を送ったりする必要がないのでクラフトや調理などほかの作業に集中できますが、それでも忘れずに時々灰をかき出しましょう。
燃焼後の灰は驚くほど少量で、後片付けに手間取りません。
ペレットストーブの機種によっては、排熱を利用して料理を行うこともできます。
ストーブ上部にフライパンやお鍋などを置くことで、煮込み料理やピザなどバリエーション豊富な料理を作ることができます。ストーブで暖まりながら料理を作ることができるので、キャンプ中でも楽しみながら作業ができます。
最近はオーブンやグリルなどの機能がついている機種も増えているので、ストーブを使って料理を楽しみたい方は探してみてはいかがでしょうか。
火のお手入れや片付けも手軽なペレットストーブですが、使用方法の注意点にも気を付けて使いましょう。
使用時に気をつけたいのは、一酸化炭素です。ペレットストーブはクリーンな燃焼のイメージがあるかもしれませんが、一酸化炭素の不安は薪ストーブや焚き火、炭火と同じです。
煙突付近に一酸化炭素検知器をかざすと、あっという間に、1時間前後で頭痛などの症状を起こすと言われている500ppmを超えました。狭い場所での使用は危険です。
また、本体はもちろん、煙突に触れると大変なやけどを負いますし、燃焼中に倒すと火災につながります。フラットな場所に設置し、長い煙突はロープとペグで固定するなど対策を忘れずに行いましょう。もちろん子どもたちには近くで走り回らないよう言い聞かせておきましょう。
ペレットストーブは、薪ストーブと比較して基本的には煙がほぼ出ないので、住宅地でも利用することができます。
ただ、着火時には多少の煙があり、木が燃える匂いはしますので、住宅が密集しているエリアでの利用は近隣の方によっては気になるかもしれません。隣家の窓や給気口の近くにペレットストーブの排気筒を近付けすぎないよう、設置前に排気筒の向きを業者に相談し、煙の少ない着火剤を使用するなどの対策を行うと良いでしょう。
燃焼効率が高いため、灰はあまり残らないペレットストーブですが、定期的なお掃除は必要となります。
住宅用ペレットストーブなどに使われる排気筒のお掃除は、ペレットの量にもよりますが、シーズンが終わった後、年に1回程度で問題ありません。ペレットストーブ内に溜まる灰の処理と、扉の窓を拭くなどのお掃除は日頃から行う必要があります。
ただ、木質ペレットによる灰の排出量は、重量の約1%以下と薪と比べても少ないので、ハケや灰用掃除機などのお掃除グッズを使えば簡単にお手入れができます。
ペレットストーブの設置費用やランニングコストはどのくらいでしょうか。相場や燃料代、補助金制度について紹介します。
焚き火台であれば本体は数千円からありますが、ペレットストーブ本体はキャンプ向きの小型のものでも数万円はかかります。
また、住宅用であれば、本体が約10~40万円のものから、海外製だと100万円前後の機種もあり、サイズや機能、デザインによって価格帯が幅広がります。
排気筒設置などの工事費用としては10~50万円ほどかかるところが多いようです。
気になる燃料代ですが、写真の国産木質ペレットは持ち運びやすい小容量タイプで、3.5kg(機種にもよりますが約4時間燃焼)990円です。国産か外国製か、またペレットの種類によっても金額は異なりますが、ホームセンターには20kg(同じく約20時間燃焼)2,000円程度のものも販売されています。
1時間の燃焼には、木質ペレット約1kgを使用します。
1kgが100円の木質ペレットを1日に5時間使用した場合、1か月燃料代は以下のようになります。
・1日で5時間使用:5時間×100円=500円
・1か月の燃料代:30日×500円=15,000円
また、上記に加え、電気を使うタイプのペレットストーブでは電気代が追加されます。
一方、薪は1束500〜1,000円で、針葉樹だと1〜2時間で燃え尽きます。
住宅や冬キャンプで1日中燃やすならペレットストーブのほうが安価です。
初期費用、ランニングコストを計算し、寒い時期に何回キャンプに行くのかを考えて検討するほうがいいですね。
石油や電気を使わず、環境に優しい燃料を利用するペレットストーブ。
国による再生可能エネルギー導入の支援のため、自治体によってはペレットストーブ設置のために補助金を受け取れる場合があります。
金額は自治体によって異なりますが、ストーブ1台に対し5~20万円ほどを受け取れる地域が多いようです。定額制や上限制など、地域によって補助制度が異なるので、設置を考えている方は、各自治体に詳細をお問い合わせすることをおすすめします。
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撮影協力:ユニフレーム https://www.uniflame.co.jp/
※このコンテンツは、2023年3月の情報をもとに作成しております。