鉄板のように薄く、それでいてちょっとした煮込みもできる「マルチグリドル」がキャンパーの定番アイテムに躍り出ました。ダッチオーブン、ホットサンド、スキレット、ミニ鉄板などキャンパーの心を揺さぶる調理道具はいろいろありますが「マルチグリドル」の魅力とはどんなところでしょうか?その特徴や便利な使い方、注意点などをご紹介します。
更新日:2023.11.15
マルチグリドルはごく浅い中華鍋のような形をした丸い鉄板。2021年に日本上陸を果たした新しい製品です。SNSを中心に評判を呼び、ロングヒットとなっています。
韓国には“鉄釜のふた”を意味する鉄板があり、家族や仲間とこの鉄板を囲んで食事を楽しむ文化があります。「マルチグリドル」のルーツはこのプレートで、どこでも家族や仲間と鉄板を囲めるようにと開発されました。
類似品も多数販売されていますが、本家といわれているマルチグリドルは鉄製に見えても、ベース素材はアルミ合金でできています。なので4mmという厚みがあっても非常に軽いのが特徴です。焼き面が約30cmのものでも約1kgに抑えられています。
そしてアルミ合金に何層もコーティングをかけているので、錆びにくく、食材がこびりつきにくく、手入れが簡単なことも特徴です。
“キャンプ飯”と検索すればいろいろなレシピが見つかります。あれこれ試してみますが、最終的に“肉を焼く”に戻りがち。
肉をおいしく焼くコツは「低温でじっくり火を通してうまみをとじこめる」と「焼き色をつけて香ばしい香りを生む」の2点。
焼き色をつけるタイミングは最初派と最後派の2つの流派がありますが、いずれにせよ「低温でじっくり火を通してうまみをとじこめる」のは共通です。
蓄熱性と熱伝導性が高く、焼きムラができない厚手の鉄板や鉄鍋がベストだとされていますがとにかく重い!
「マルチグリドル」は蓄熱性こそ鉄よりもやや劣るものの、熱伝導性に関しては鉄よりも高いアルミ合金を採用していて、弱火でも均一でじんわり火が通るよう設計されています。
だから料理が苦手でも、弱火を守ればふっくらおいしく肉が焼けるのです。
ガス&ガソリンバーナーはもちろん、焚き火での調理もOK。
ただし、高温だとコーティングに影響を与えるので、バーナーは弱火〜中火に抑え、焚き火に載せる場合も熾を少し散らすなど控えめにすると傷みづらく長く使えます。
なお、バーナーの場合、燃料部分を「マルチグリドル」が覆っていないか、ゴトクに載せたときに安定するかの確認を忘れずに。「マルチグリドル」に限ったことではありませんが、大きすぎる鍋や鉄板をバーナーのゴトクに載せると安定感が損なわれるうえ、熱によってガス缶等の燃料が熱せられて非常に危険です。
「マルチグリドル」でもっとも注目したいのは、わずかに中央がくぼんでいるデザイン。
焼く・炒める・揚げる・煮るが可能な中華鍋も似た形状ですが、中華鍋は直径30cmのもので深さは10cmほど。一方の「マルチグリドル」は半分以下の深さです。
適度にくぼんでいて、周囲はまずまずフラット。
フチらしいフチがないのに油が流れ落ちることがなく、水分の多い煮物や鍋もできるのです。
それに焼き面が広いので、炒めて香ばしさを引き出した食材を周囲に置いて保温しながら、ソース作りをするという通常なら2つの鍋が必要なシーンでも「マルチグリドル」ひとつでOK。しかも熱源はひとつで十分なのです。
パスタ(乾麺)を水に浸けておくと少量の湯で短時間に茹でられます。肉をカリッと炒めながら、鍋の中央で水漬けパスタを茹でてスープパスタを作れば、「マルチグリドル」ひとつで最後までカリッとした肉の食感を残せます。
中央でチーズを溶かし、周囲に食材を並べておけば具もチーズソースも熱々のままチーズフォンデュをいただくなんてことも。
全体がフラットな鉄板や鍋はもちろん、カーブがきつい中華鍋でもこうはできません。
「マルチグリドル」は深型であっても底からハンドルの上端まで高さ6cmほど。食器などと一緒に持ち運びやすい形状です。
ハンドルも短いのでハードタイプのコンテナボックスであっても収めやすいと言えるでしょう。
食器などを入れるボックスに入らなかったとしても、汚れと焼き面のコーティング保護のために水切りや食材保管に便利な竹のザルで挟んで風呂敷で挟めば、そのままトートバッグの中に収められます。
これならコンパクトカーでのキャンプでも無理なく持っていけます。
合成洗剤を禁止しているキャンプ場は珍しくありません。
食器や鍋はペーパーでザッと汚れを拭き取り、石鹸で洗い流すわけですが「マルチグリドル」の場合は焦げ付かないコーティングを施しているので手入れは簡単。
溝や角がないのでペーパーを滑らせるだけで大半の汚れが滑り落ち、キャンプ場では水洗いするだけでもスッキリします。
とはいえ、わずかな油分や汚れが残っている場合があるので、帰宅後、食器用中性洗剤をスポンジに含ませて洗い、乾燥させたいところ。
気をつけてほしいのは、金属製のタワシやトング、ターナー、フォーク&ナイフなどを使うと表面のコーティングを傷つけてしまうこと。かなりタフなコーティングでも、金属製品や尖ったもので力強くこすると傷めてしまうからです。
焼き面に肉を載せたままナイフで切っているキャンパーを見かけますが、長く使いたいなら使用を避けた方が無難です。
注意点はもうひとつ。
やけど防止のグリップが付属されていますが、挟むタイプは安定しづらく、木製のグリップは安定感があるものの装着したまま焚き火に載せるのは不安です。
結局、耐熱グローブでハンドルを持つほうが扱いやすいでしょう。
ダッチオーブンやスキレットはローストからスープ、炊飯まで幅広い料理を作れる“魔法の鍋”ですが、重くてかさばるのも事実。
かといってミニ鉄板は手軽でも、水分が多いソース作りや煮込みは不得手。
アルミ合金のホットサンドメーカーも肉を焼くのに適していて、それでいて軽いのですが焼き面が小さいのでファミリー利用では少々厳しい面があります。それにミニ鉄板と同じで水分が多いものには不向き。
「マルチグリドル」は肉をおいしく焼けて、ひとつの熱源で鍋2つ分の働きをすることも可能なプレートで、コンパクトなクルマやバイクでキャンプに行くときにぴったりです。
●ホットサンドメーカー
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撮影協力:ジェイエイチキュー https://jhq.co.jp/multigriddle/
※このコンテンツは、2023年11月の情報をもとに作成しております。